きのう、うっかり平日のつもりで駅に出たら、駅ビルはかなりの混雑。土曜日なのだった。タリーズで論文を読もうと準備してきたのに、きっと満席だろう。しかし念のため覗いてみたら奇跡的にひとつ空いていた。隣は70代の女性二人。楽しそうに会話している。
こういうとき、わたしはだいたい自分のことに集中できない。どんなアホらしい会話も退屈な会話も、世の中にこういう人間がいるのダという興味でついつい聞いてしまう。特にきのうは素晴らしい会話だったので、もう持っていた論文など放ったらかしで(読むフリはしていた)二人の会話を聞いていた。ときどき涙まで出た。
(あまり個人的なことをここに書けないので適当に変えて書きます。)二人は同じ年頃のグループに属している仲良しらしい。本が好きで、「これ、面白かったわ」と言いながら、ひとりがもうひとりに気に入りの本を貸していた。食べ物の話らしい。でも彼女らのグループでは本に関心がある人は他にいなくて、二人が本の話や貸し借りをしても「誰も興味がないみたいよね」。
そのうち、この年齢にありがちな話題として、彼女たちは親近者の病気、入院のこと、曾孫が引きこもりになったことなど話すのだが、話ぶりは穏やかでユーモアがあって、お互いを励ますときにも出しゃばらない、好意を相手に押し付けない。このあたりから、わたしは羨ましくてため息が出た。こういう友達がいたらどんなに幸せだろう。いや、いますぐ隣の女性に「あの!わたしの友達になってください!」と申し込みたくなったぐらいだ。
さらに聞いていると、二人は共通の趣味があって、それは手作りのモノを作ってネットで販売していることがわかる。ひとりは布で作った小物。それが売れるととても嬉しい。こないだもね、ウクライナの女性が買ってくれたでしょ。ノルウェイの人とか。わたしの作ったものを好んでくれる、そばに置いてくれる、どんな人なのかなぁ。知りたいけど知らないで想像するのも楽しいのよね。そう言いながら、二人はスマホを取り出して、「これは追加で作ろうと思う」「これは色を変えてみようかな」「今度はグリーンにしてみたら?」などと本当に楽しそうに話している。写真を撮ったりネットに上げるのは、たぶん娘さんなのだろう。娘さん経由でどんな人が買ってくれたかをおしえてもらっているらしい。「この年になって、ネットでこんな楽しいことができるなんて、すごく幸せなことだわねぇ」と二人。素晴らしいね。ネット万歳。
二人とも喋り方も若々しくて、しょっちゅう冗談を言ってはクスクス笑っている。なんていい感じなんだろう。こんな70代がいるなんて奇跡みたいだ。わたしは感激のあまりちょっと涙ぐんでしまった。論文読むフリしながら。
しかし。こりゃ博論なんか書いている場合じゃないかもね。わたしも同年代の人ともっと知り合いたい。友達がほしいー!....などと日記でつぶやきながら、博論の一章のアウトラインをまた書き直すのであった。友達作りよりもいまは博論か。
posted by 秋野とらこ at 20:32|
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